プロポーズは1秒でも早く

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大晦日の夜、東京の実家に戻ったオレはその足で初詣に連れ出され、人混みに苦しみながら受験生である妹の合格祈願を家族と取り行い、元旦を迎えてそのままお節も雑煮も食べる事無く東京●な奈だけを買って、その足で大阪に戻ってきたのだ。 それもこれも、仕事の都合で年末全く会えなかった彼女と、少しでも早く会いたいと逸る気持ちが、この尋常じゃない弾丸帰省スケジュールを決行させたのだった。 しかし、帰りの新幹線で寝れると思っていたのに、隣に座ったおっさんのいびきがうるさかったのが誤算だった。とうとう一睡もできずに新大阪に到着してしまったのだ。 とにかく、疲れた身体を少しでも休める為、迎えに来てくれた彼女に事情を説明し、彼女の部屋で仮眠を取らせてもらうことになった。せっかくのデートなのに申し訳ない限りである。 「奈央、ホントにごめん!!」 頭を下げて心から謝罪した。 まずは、どうにかして地に落ちた信頼を回復しなければいけない。 「……東京で、ちゃんと会えたん?」 一瞬、彼女の質問の意味がわからなかった。 短い時間だったけど、家族と過ごしたことは説明したはずだ。 予定になかった今回の帰省は、オレの彼女を見たいと言う両親を、押しとどめる為だけに帰ったものだった。プロポーズする前に、親にしゃしゃり出で来られては困るからだ。 急な里帰りになったのもそのせいだった。 「え? うん、ちゃんと会ったよ……」 両親にバラしてしまった妹を叱りつつ、奈央の事もちゃんと説明してきた。 「もうすぐ帰るって事も、説明してきたし」 ……そう。大阪に転勤になってもうすぐ2年。 この春、オレは東京の本社に戻る。いわゆる、期限付きの転勤だった。 だからこそ、彼女にプロポーズする事を決めたのだ。 オレはどうしても、彼女を東京に連れて行きたいと思っている。 一年と半年……大切に彼女と愛を育んできた。 八割方、いい返事がもらえると信じている。 しかし、残りの懸念は東京だった。 彼女は大阪生まれの大阪育ち。友人知人は関西にしかいない。 すべてをなげうって、東京に来てくれるだろうか? それを思うと自信が揺らいだ。 ……いや、弱気になってどうするんだ、オレ!  三ヵ月後にお別れなんて、絶対ムリ。……マジでないから!
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