プロポーズは1秒でも早く

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「どどどど、どうしたんだよ」 「修ちゃんと一緒におれて、楽しかった。……いい思い出に出来ると思う」 「お……思い出って」 どういう意味? は? オレ、過去の人? 「うん。……だからさ、これで終わりにしよ」 うつむいた彼女にそう締めくくられた。 いやいやいやいや。ムリムリムリムリ。 何、その冗談? 新春からキツイぞ。 そのノリ、ちょっとツッコめないから。 ……え?  「ちょうど良かった。部屋にある修ちゃんの荷物、持って帰って」 そう言うなり彼女が立ち上がって、オレの私物をまとめだした。 黙々と片付けて行く彼女を見て、それが冗談でない事を初めて認識する。 ……ほ、本気なの? 全身の血の気が引いていくのがわかった。 「な! どうしたんだよ! 急に何?」 「急とちゃうよ。……修ちゃん……春にはいなくなるやん」 憤っていると、拗ねた口調で彼女が答えてきた。 一瞬だが、そこに希望の光が見えた。……ここで、プロポーズだ!! 「いや……だから、オレ!」 「ウチ、遠恋なんて出来んし……。かと言って、東京には行かれへんのやから……」 ……光は幻だったようだ。 彼女は大阪を捨てられない。 ここが好きなんだ。……オレよりも。 思っていた以上のショックを受けた。 どうすればいいのか……頭が混乱してくる。 いや、こうなったら、なんとかして大阪に残ろう。 そうだ! 異動願いだ。  本社になんて戻らなくったっていい。オレが東京を捨てる。 彼女と居られるなら、オレだって大阪LOVEだ。 「お、オレ、大阪に残る!!……だったら大丈夫だろ?」 よし、この勢いでプロポーズだ! 「奈央! オレと……」 「そやけど……ウチ、5月から福岡やし……」 「けっ…… え?」 ……は? え、福岡? ええええ!!!  ちょちょちょ、ちょっと待てよ。 東京には来ないのに、なんで福岡に行くんだよ!! 「ふ、福岡ってどういう事? どうして奈央が福岡に?」 「それは……仕事で……」 「は? 仕事?」 「橘さんに……ついて来て欲しいって言われたん」 橘って……まさか、営業のタチバナ?  なぁぁぁ!! アイツぅぅぅぅ!! まだ奈央の事、あきらめてなかったのかぁぁ!!
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