18人が本棚に入れています
本棚に追加
「どどどど、どうしたんだよ」
「修ちゃんと一緒におれて、楽しかった。……いい思い出に出来ると思う」
「お……思い出って」
どういう意味? は? オレ、過去の人?
「うん。……だからさ、これで終わりにしよ」
うつむいた彼女にそう締めくくられた。
いやいやいやいや。ムリムリムリムリ。
何、その冗談? 新春からキツイぞ。 そのノリ、ちょっとツッコめないから。 ……え?
「ちょうど良かった。部屋にある修ちゃんの荷物、持って帰って」
そう言うなり彼女が立ち上がって、オレの私物をまとめだした。
黙々と片付けて行く彼女を見て、それが冗談でない事を初めて認識する。
……ほ、本気なの?
全身の血の気が引いていくのがわかった。
「な! どうしたんだよ! 急に何?」
「急とちゃうよ。……修ちゃん……春にはいなくなるやん」
憤っていると、拗ねた口調で彼女が答えてきた。
一瞬だが、そこに希望の光が見えた。……ここで、プロポーズだ!!
「いや……だから、オレ!」
「ウチ、遠恋なんて出来んし……。かと言って、東京には行かれへんのやから……」
……光は幻だったようだ。
彼女は大阪を捨てられない。
ここが好きなんだ。……オレよりも。
思っていた以上のショックを受けた。
どうすればいいのか……頭が混乱してくる。
いや、こうなったら、なんとかして大阪に残ろう。
そうだ! 異動願いだ。
本社になんて戻らなくったっていい。オレが東京を捨てる。
彼女と居られるなら、オレだって大阪LOVEだ。
「お、オレ、大阪に残る!!……だったら大丈夫だろ?」
よし、この勢いでプロポーズだ!
「奈央! オレと……」
「そやけど……ウチ、5月から福岡やし……」
「けっ…… え?」
……は? え、福岡? ええええ!!!
ちょちょちょ、ちょっと待てよ。
東京には来ないのに、なんで福岡に行くんだよ!!
「ふ、福岡ってどういう事? どうして奈央が福岡に?」
「それは……仕事で……」
「は? 仕事?」
「橘さんに……ついて来て欲しいって言われたん」
橘って……まさか、営業のタチバナ?
なぁぁぁ!! アイツぅぅぅぅ!! まだ奈央の事、あきらめてなかったのかぁぁ!!
最初のコメントを投稿しよう!