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神谷さんは少しだけ、眉を下げて笑った。
「……そう言うだろうな、って、気はしてたんだよ」
困ったような、弱ったような、少しだけ呆れたような。
けれど、やさしく柔らかい笑み。
その表情が何を意味しているのか、なんて。
私にわかるはずはなく、ただ聞き返す。
「え……? あの……」
「いや、こっちの話。気にしないで」
軽く手を振った神谷さんに、それ以上追求することは出来なかった。
少し、何かを考えるような素振りを見せてから。
くい、と手元のお猪口をあおった神谷さんが、気を取り直したように私の方を向く。
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