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「触れるのも嫌だわ。獣臭くて。」
響く笑い声。ニナは耳を塞ぎたくなった。耐えられない。犬の獣人であるニナは声がよく聴こえた。
ニナ「(これだから・・・もう嫌なんす。結局オイラは・・・)。」
シュン「黙れ。」
会場全体が沈黙した。シュンの低く威圧的な声は全員の脳に恐怖心を抱かせた。
シュン「さっきから聞いてたらふざけたことばかり言ってる。獣人が化け物?違うよ。獣人は立派な人間だ。」
ニナを含め、会場中の人間が目を丸くする。
シュン「進化の過程でどういう風に分かれたのかは知らないけど、獣人だってヒトと何ら変わりはない。傷つけば血が出る。心だってある。人は愚かしい。よく知りもしないで自分達と違うものは徹底的に拒絶し差別する。人種や生まれや育ち、外見だけで何が分かる?何を知れる?何故内面を見ないの?怖いことから逃げて知ろうとしなければ何も変わらない。僕は
何も知ろうとしないで嘲るあなた達の方がよっぽど穢らわしく思う。」
誰も言葉を発しようとはしなかった。小さな子供に説かれたことがショックなのかはたまた自分達がしてきたことを恥じているのかは解らない。シュンはニナの方を向くと真っ直ぐに見つめる。
シュン「ニナも死にたいなんて、外に出たくないなんて言わないで。確かに今の人は間違いに気づけてないけど何時かはそれに気づくときが来る。それに・・・折角可愛い顔(特に犬耳)をしてるのに外に出ないなんて勿体無い。」
ニナ「かかかか、可愛い?オイラがすか?そ、そんな事な、ないすよ。」
シュン「ん。君が一人が怖いなら僕が一緒にいる。外に連れ出してあげる。だから、行こ?」
手を差し伸べ微笑むシュンにニナはドキッとした。
ニナ「(なんなんすか?この胸の高鳴りは・・・凄いドキドキしてああ、顔も暑いっす。)」
「ちっ!そうはさせるか!みすみす逃がすものかよ!」
一人の男(ハゲ)が叫ぶ。曲刀を抜き、襲いかかる。
シュン「・・・。『四炎舞ーしえんぶー』。」
『天焔』が燃え盛り、シュンは4回突きを放った。3発は曲刀を最後の1発は男の喉元ギリギリで止めた。
「ひっ!?」
シュン「消えろハゲ。次は当てる。」
本気の殺意を前に逃げ出さない者はいないだろう。男は情けない悲鳴をあげながら走り去った。
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