出会い

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晴れ渡ったある日、一人の狩人が森へと入った。 彼にとってみれば日常だったが、運命に照らし合わせてみれば、必然と言えた。 彼は森に入り、獲物を得ては糧とする狩人である。唯一無二の相棒と呼べる犬を伴い、深い森を音もなく歩く。 ひとたび、彼の射程圏内で物音がすれば、たちまち、彼の持つ弓矢がしなり矢が空を切り裂き獲物を仕留める。 鳥の羽ばたき、兎などが通り擦れた葉音。そのすべてが彼の鋭い感覚を刺激し、獲物の居場所を教えてくれる。 そうやって仕留めた獲物を忠実な犬が、これも音もなく近寄って咥え主人の元へ持ち帰る。 獲物を得た途端、彼の気配は一変し、緩やかで穏やかなものとなる。 彼は、己と相棒が生きるために狩りをするが、それ以上の命は奪わない。 獲物がまだ幼ければ、黙ってそれをやり過ごす。 犬も心得たもので、幼い気配には容赦なく吠え、威嚇する。 「あなたはまだ幼いのだから、早くお行き」 犬の言葉が理解できれば、きっとそう言っているに違いない。 必要な獲物を仕留めた後の彼は、己の気配を消そうともせず、茸や木の実、自然の恵みを必要なだけ採取し、丸太小屋へと帰っていく。 その様は、はたから見れば、犬と森をただただ、散歩しているようだ。
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