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「いってきまーす。」
身なりを整えた私は家を出て、真っ直ぐお隣の家へ向かう。
『小日向』と書かれた表札を横目にインターホンを押した。
少し待つと、中からあわただしく男が出てきた。
「おはよう!空奈!」
その男・・・小日向 太陽は白い歯を見せて二カッと笑った。
「おはよ。たいよー。」
私も口角を少しだけ上げて笑った。
私たちは学校に向かって歩き始めた。
私と太陽は毎日登下校をともにしている。
泣き虫だった私が強がりになったり、悩みがひとつもなかった太陽に勉強ができないというなやみができたりと、私達二人はいろいろと変わった。
だが、仲のよさだけは、少しも変わらなかった。
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下駄箱で靴を履いた私は、太陽の元へ近寄った。
太陽は、下駄箱を見つめ、困った顔をしている。
「・・・どうしたの?」
私が聞くと、太陽は下駄箱から封筒を取り出した。
「また・・・もらっちゃった・・・。」
太陽は苦笑いをしながら見せてきた。
太陽がもらったソレは、いわゆるラブレターっていうやつだ。
「あぁ・・・。相変わらずモテるね。」
私はそういって、太陽に背を向けて歩き出した。
「あ、待ってよー。」
太陽はそういいながら私を追いかけてきた。私はかまわず歩き続けた。
「ちゃんと断らないからよ。」
私がそういうと太陽は「はは・・・」と苦笑いをした。
「断ってるつもりなんだけどなぁ。」
「・・・ふぅん・・・。」
私はそういうと、さっさと自分の教室の前に行き、「いやならちゃんと断りなさいよね。」といった。太陽は「わかったよ。」と、笑った。
私は、一番奥の自分の席に座った。
浅いため息をつき、頬杖をつきながら窓の外を見ていた。
・・・高校に入ってから、太陽の人気は跳ね上がった。先輩から後輩、同級生からも気に入られるようになり、毎日のように太陽の下駄箱にラブレターが入っていた。最初は気にしていなかったが、最近はなんだかいやになってきた。
太陽が人気なのはうれしいことだが、いつか太陽を誰かに取られそうで嫌になってきていた。
・・・別に太陽が好きとかそういうのじゃなくて、なんていうかこう・・・
なんて、一人で言い訳しているときに、後ろから誰かに肩をたたかれた。
「おはよぉっ!西宮さん!」
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