辺境の町 ジオ

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 そのジオの村。 人の背丈以上の土壁に囲まれているその中の、丁度真ん中辺りに。 特に大きいという訳ではないが、二階建ての素朴な家があった。 屋根は緑色、壁は白。 二階の窓の外には些かくたびれた鐘が一つ、ぶら下がっていた。 出入り口は大きな両開きの扉で、その上には木製の看板が打ち付けられている。 風雨にさらされ、大分字は霞んでいるが、それには「配送所」と、何となくそう書かれていた。 「配送所」――。 遠い村や街から月に一回、大きな運搬用の馬車が来て、村の某宛に手紙やら小包が来たり、逆に送ったりする場所である。 交通の便が悪く、外出に危険を伴う辺境の村にはなくてはならない建物だ。 今日はその月に一回の集配日である。 古くからの友人、遠くにいる家族。 それらとの唯一の交信手段である手紙。 辺境の村の人々は今か今かと指折り数えて待ち望む、大切な日なのだ。 馬車が来たとなれば鐘を鳴らし、皆に伝えるのだが――。
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