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「申し訳ございません」
昼下がり。
とある森の中で、そんな声が聞こえた。
青年が一人、男に向かって頭を下げている。
濃いダークブルーのスーツに、繊細な刺繍が入った靴。
辺りは真上に覗いた日の光を受け、青々しく輝いていた。
柔らかく吹く風に、小鳥がひよひよとさえずっている。
真っ直ぐに伸びた木々の幹は太い。
その根は地面を縫うように隙間なく張り巡らされ、野草が寄り添うように繁っていた。
踏み荒らされた跡は何処にもない。
土の、湿った臭い。
「見失ってしまいました」
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