13人が本棚に入れています
本棚に追加
青年がそう言うと、男はふうと息を吐いた。
それに青年は余計に身を固くする。
かさ、という小さな音と共に一匹の動物が顔を出す。
茶色に縞の入った小柄な体。
太く丸まった尻尾。
黒い瞳は大きくて愛らしい。
その顔の額の部分――。
そこにひとつ、小さな角が生えていた。
「探知はかけたか」
と、男。
「かけましたが――如何せん、移動魔法を使ったようで」
「ラダ」
男が青年の言葉を遮って、オレンジ色の髪をした少年に声をかける。
少年――否。
「オレはムリにきまってんだロ」
首を振る動作はまさに人間そのものである。
だが、その異様に長い手足、緑色の肌。
口は耳まで裂け、その瞳は――大きな一つ目。
そう、彼は――
魔物だ。
最初のコメントを投稿しよう!