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ふう。
もう一度溜息をつくと、男は空を見上げた。
雲は緩やかに去って行く。
木々がさわさわと揺れ、男の漆黒の髪も風にそよいだ。
「仕方あるまい」
男は目を閉じる。
「大体の方向は分かっている。何――」
目を開いた。
月のように冷たい瞳が、きらりと光る。
「すぐに見付かる」
「ギィ!」
そこへもう一匹、繁みを分けて魔物が現れた。
人の子供のような身長で、鼻は醜く曲がり、手には木の棒を持っている。
三人が振り返り、それを見た。
そして、
「お前…」
男が呟く。
途端に小さな魔物はカタカタと震え始め、そのまま、気圧されるように後退った。
男が一歩、足を前に出す。
魔物は下がった。
もう一歩、もう一歩。
男がもう一度何か呟いた瞬間――。
鳥が、一斉に飛び立った。
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