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ガラガラと揺れる馬車の布のテントで囲われた荷台。
そこに、本来の積み荷であるいくつもの木箱と共に一組の男女が乗っていた。
この国では珍しい黒髪黒目。
整った顔立ちは少年というよりは青年に近いが、はっきりと言い切るにはまだ幼さが残る。
歳の頃は十七と言ったところか。
中肉中背で一見すれば少し頼りなくも感じるかもしれないが、その身は無駄なく引き締まり、無造作に木箱に座っているようでいて一切の隙がないその姿から相当の手練れである事が分かる。
その横には本来であれば腰の剣帯に挿されていたであろう一目で業物ではないと分かる剣が置かれている。
その対面の木箱に座るのは艶やかで燃えるような赤い髪を腰まで伸ばした少女。
髪と同色の瞳はやや吊り目で少女が持つ強い意志を表しているようだ。
その瞳を中心に名のある芸術家が一寸の狂いもなく完璧に作り上げたかのような顔は少女から女性へと移り変わりつつあり、可愛いと綺麗では綺麗の割合が大きい。
身長は百六十半ばと言ったところか。
首から足首までを覆い隠した砂漠色のローブの上からでも少女のスラリと伸びた手足は良く分かる。
やや起伏に欠けるのを少女自身は気にしていたが、それを補ってもあまりある程の魅力を少女は持っていた。
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