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「この馬車に乗ってから何時間くらい経ったかしら?」
「だいたい五時間くらいじゃないか」
アルセリアの問いにカーラは間髪入れずに答える。
カーラは時計など持っていないし、太陽が見えているならその位置から時間を割り出す事は出来るが、あいにくと布で囲われた馬車の荷台からではそれも出来ない。
だが、経験としてカーラの体内時計が正確だと知っているアルセリアはカーラの言葉を疑う事はしなかった。
「五時間……。どうりでお尻も痛くなってきた訳ね」
馬車が走っているのは街と街を繋ぐ街道ではあるが、道が舗装されている訳でもない。
揺れも酷いし、時折車輪が石を踏んで跳ねたりもする。
お世辞にも乗り心地が良いとは言えない。
もっとも、この馬車は積み荷を運ぶ物であって人が乗る物ではないのだからそれも当然。
そのうえ座っているのが固い木箱の上ともなればお尻が痛くなるのは自然の摂理だろう。
「俺達は厄介になっている身なんだから文句言うなよ」
「分かってるわよ、そんな事」
二人がこの馬車に乗っているのは偶然出会った気の良い商人の好意によるもの。
積み荷の手伝いをするという条件で途中まで乗せていってもらっているのだ。
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