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顔でも洗ってこいと言われ、洗面所へ。
風呂に入るか?と聞かれたが、さすがにそれは……と、お断りして。とりあえず顔を洗いに向かう。
当然だが、洗顔はなく、石鹸を泡立てて洗った。
すっかり目も覚め冷静に見渡す。
洗面所には、女性の影は無し。にしても、整然とした部屋。松本部長の性格が出ている。
リビングに戻ると、パンのトーストしたいい薫りが部屋中に広がっていた。
部屋を見渡す。リビングにも寝室にも女性の影は無く。
真面目に生きている松本部長の生活ぶりがよくわかった。
風が入るベランダへ出てみる。
いったい何階なのってほどの上階で、空が近い。
ふっと、空を見上げた。
次の瞬間、後ろから抱きしめられた。
「その顔……誰にも見せたくないな」
「えっ!?」
「よく、会社の桜の木を眺めてただろう。表情がきれいすぎて、俺、ひと目惚れだった」
驚いて振り返った瞬間……
唇が、温かな、柔らかな感触に包まれた。
えっ……うそっ!?
下唇、上唇と、順番に食べられているように……
クチュ、チュッと、優しいキスを落とされていた。
頭がカァ~っと熱くなり、芯が痺れる感じ。
すでに松本部長の愛に、どっぷり溺れてしまっていた。
「誰にも渡さない。……離さない」
「松本部長」
いったいいつから……あたしはあなたに守られていたの?
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