◇◇ 第5章 ふたりの朝 ◇◇

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顔でも洗ってこいと言われ、洗面所へ。 風呂に入るか?と聞かれたが、さすがにそれは……と、お断りして。とりあえず顔を洗いに向かう。 当然だが、洗顔はなく、石鹸を泡立てて洗った。 すっかり目も覚め冷静に見渡す。 洗面所には、女性の影は無し。にしても、整然とした部屋。松本部長の性格が出ている。 リビングに戻ると、パンのトーストしたいい薫りが部屋中に広がっていた。 部屋を見渡す。リビングにも寝室にも女性の影は無く。 真面目に生きている松本部長の生活ぶりがよくわかった。 風が入るベランダへ出てみる。 いったい何階なのってほどの上階で、空が近い。 ふっと、空を見上げた。 次の瞬間、後ろから抱きしめられた。 「その顔……誰にも見せたくないな」 「えっ!?」 「よく、会社の桜の木を眺めてただろう。表情がきれいすぎて、俺、ひと目惚れだった」 驚いて振り返った瞬間…… 唇が、温かな、柔らかな感触に包まれた。 えっ……うそっ!? 下唇、上唇と、順番に食べられているように…… クチュ、チュッと、優しいキスを落とされていた。 頭がカァ~っと熱くなり、芯が痺れる感じ。 すでに松本部長の愛に、どっぷり溺れてしまっていた。 「誰にも渡さない。……離さない」 「松本部長」 いったいいつから……あたしはあなたに守られていたの?
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