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気付いだ時には部屋の中が薄暗くなりかけていた。
「やだ私、寝ちゃったの?」
慌ててスマホを探していると、
着信音が鳴り響いた。
母からだった。
「もしもし、鈴? 今日は何時に来るつもりなの?」
スマホを耳に当てるなり母の不満そうな声が聞こえてきた。
時計を見るともうすぐ6時になろうとしていた。
「あ、ごめん。すぐ行くから」
私は寝起きの頭で朦朧としながら立ち上がった。
「もしかして、何にも被らず昼寝でもしてたんじゃないの?」
私の慌てる様子に母が言う。
やっぱり母は母だ。
私の生態をよくわかっている。
「そんなことしてたら風邪引くわよ?」
私が肯定する前に、母は呆れたように言った。
「じゃあ、待ってるわよ。早くしないと拓真がお腹空かせてダダこね始めるから、急いでよ」
「わかった。すぐ行く」
受話器の向こうから甥っ子である拓真の声が騒がしく聞こえてきた。
私は慌てて上着を羽織り、
少しの荷物をかき集めてアパートを飛び出した。
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