幻影

3/21
前へ
/35ページ
次へ
こんな風に休日はだらだらと過ごす日が多かった。 一人暮らしを始めてから口うるさい母に起こされることもなく、 寝たいだけ寝ている。 私が就職した会社は地元では有名な中堅の企業だった。 進学した短大、就職とも実家から通える範囲内だったために、 私は一人暮らしというものをしたことがなかった。 けれど、二年前に4つ年上の兄が結婚したのを機に、 私は実家を出て一人暮らしを始めたのだ。 兄が結婚する時、既に兄嫁は妊娠していた。 しかし、いわゆるデキちゃった婚とは違い、長い付き合いだった二人に結婚のきっかけを与えたという感じだった。 4年間付き合っていた二人はよくお互いの実家を行き来していて、うちの両親も彼女を気に入っていた。 兄嫁も今時珍しく、うちの親との同居を希望しており、結婚当初から一緒に暮らすことになった。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1105人が本棚に入れています
本棚に追加