幻影

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季節は秋。 残暑を振り切り、朝晩の涼しさが寒さに変わっていくのももうすぐだった。 布団から出るのにまだそんなに苦労はしないけど、 「冬になったら辛いんだよね……」と独り言をぼやきながらのそのそとベッドから()い出た。 すぐにお昼になってしまうので、 トーストとホットココアだけを準備して、テレビを付けてパンをかじった。 洗濯物を干して、 掃除をして、 昼食はチャーハンとスープを作って、 一週間分の食材の買い出しに出かける。 遅くまで寝ていた分、 毎週末にしなければならないことを段取りよくこなす。 いつもと同じ週末なのに どこかそわそわしていた。 音もならない、振動もしない携帯を覗きこんでは メッセージがないかを何度も確認していた。 その度に落胆するのに それをやめることが出来なかった。
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