過去 2  #2

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……タイミング。 それは自分の思い通りにはいかないもの。 自分でコントロールできるのなら、世の中に『悪いタイミング』は存在しない。 私に彼氏が出来たわずか一週間後、 健吾くんから約一年ぶりに連絡が来たのだった。 携帯の画面には番号だけが表示された。 「誰だろう?」 そんな時はいつも少し構えた口調だ。 「……もしもし。福原です」 私のいぶかしんだ声色に相手は一瞬、間を置いた。 「……あ、リン?」 その声に、体の輪郭に沿って電気が流れたみたいだった。 「……健吾くん?」 家のリビングにいた私は急いで二階の自分の部屋に駆け上がった。 部屋に入ると心臓が躍っているのがわかった。 私はそれをなだめるように自分の胸に手を当てながら、 健吾くんの連絡先を失くしたいきさつを話した。
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