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「ごめんね」
謝る私の受話器の向こうで、
健吾くんが胸をなでおろしているように思えた。
「そっか……なんだ。そうだったのか……。なんだよ、早く言えよ……って、言えなかったんだよな」
健吾くんが笑って私も笑う。
近況を話して少し話が盛り上がった頃、
健吾くんか切り出した。
「……リンは……彼氏いるの?」
その言葉に私の表情が一気に堅くなる。
「…うん。」
……たった、一週間前から。
「……そっか。そうだよな」
そこから言葉が続かなかった。
私はこの時、
「健吾くんは?」
そうは聞かなかった。
聞けなかった。
健吾くんに彼女がいてもいなくても、
その答えがどちらでも、
なんとなく怖かったから。
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