過去 2  #2

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大きな大会では試合前日に会場近くに宿泊する。 大会初戦もそうだった。 選手も私も久しぶりの宿泊にはしゃいでどこか修学旅行のような気分だった。 けれど、翌朝にはその雰囲気は一変し、 緊張の渦の中ピリピリした気配が漂っていた。 「頑張って」 その言葉さえも掛けられなかった。 だけど、試合直前、 ベンチ脇で組む円陣に哲くんが私の腕を引いて輪の中に入れてくれた。 哲くんの腕が私の肩に力強く乗せられた。 私は円陣の中で顔を上げることが出来なかった。 緊張した空気のせいか、 みんなの気迫のせいか、 今にも涙がでそうだったから。
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