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私は健吾くんになんて返事をしようか迷っていた。
「桜井さん、何だって―?」
由奈が私のスマホを取り上げそうになるのをかわし、
私はこたつを抜け出した。
そして、カーテンの隙間からサッシをほんの少しだけ開けた。
冷たい空気が部屋の中に流れ込み、
由奈が寒いと声を上げてこたつに体を丸めこんだ。
外には雪が降り始めていた。
「……由奈、雪降ってるよ」
こたつからくぐもった気のない返事が返って来て、
早く閉めろと怒られた。
ホワイトクリスマス。
冬になれば毎日のように雪がちらつくこの街では、
今日の雪も決して珍しくはないけれど、
今日はやっぱり特別だと思った。
時刻はもうすぐ0時。
子供たちはサンタクロースに願ったプレゼントを夢に見て、
寝息を立てていることだろう。
音もなく落ちるこの白い雪が
奇跡ならいいのに。
奇跡が降り積もる日がイヴならば
大人だって年に一度くらいは願いを掛けてみたくなる。
今日は神様じゃなくてサンタにお願いするべきなんだろうか。
健吾くんに……
……会いたいです。
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