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「破談の理由……。結局アイツは俺にも教えてくれなかったけど、だから俺にはわかるんだよ」
私は硬い表情のまま首を捻る。
純也さんの言いたいことがよくわからなかった。
「『違和感』と『後悔』。それが桜井にもなかったとは言い切れないよ。人には必ず忘れられない人がいる。その人のことを上手く心の中で消化出来なければ、新しい関係にも影響する。最悪の場合は破綻だ。女よりも男の方がそういうところは不器用なのかもしれない」
純也さんは最後にこう付け足した。
「……俺みたいにね」
健吾くんの過去……。
健吾くんとの文字の往復を思い出す。
『いろいろあって老けました(笑)』
私の知らない健吾くんが、
その言葉に隠れていた。
『結婚した』というのは
そうやら事実ではなさそうだけど、
それを素直に喜べなかった。
この話は半分が純也さんの想像にすぎないけれど、
それでも私の心を押し潰してしまいそうなほど切なかった。
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