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結局、純也さんが頼んでくれたココアにはほとんど口をつけなった。
最後の客として店を出ると、
私たちの背後で店のガラスドアに鍵が掛けられ、
ブラインドが下げられた。
雪が降り出していた。
やっぱり空は、この雪の準備をしていたのだろう。
大粒の雪は見上げる私の頬に止まり、
私の心に染み入るように静かに溶けた。
「……降ってきたね。駅まで行けばタクシー拾えるよ」
私は駅まで純也さんと歩いた。
純也さんが私の歩調に合わせるように、
私たちは着かず離れず一定の距離を保って肩を並べて歩いていた。
駅で並ぶタクシーの先頭車両に歩み寄り、
純也さんが一度車に体を入れて、運転手と言葉を交わしていた。
「遅くまでごめん。また連絡させてもらう」
純也さんは私をタクシーに乗せると名残惜しそうにタクシーから離れた。
「おやすみ」
「……おやすみなさい」
私は座席で小さく言った。
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