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「……もしもし?」
「あ、リン? 今日、急だったけど予定大丈夫だった? 無理しなくていいけど……」
「……ぜ、全然。全然無理じゃないよ!」
見えない健吾くんに大きく首を横に振る。
「そっか。ならよかった。少ししたらこっち出るから。混んでないといいけど、渋滞してたら遅くなるかも。また途中で連絡する」
「うん。気をつけてね。……待ってるから」
「サンキュ。じゃ、後で」
電話を切った後も心臓の音は治まっていなかった。
ずっと聞きたかった健吾くんの声。
ためらいも、緊張もなく、
会わなかった年月を少しも感じさせなかった。
『リン』
健吾くんに呼ばれる文字ではない私の名前は
カラダの奥で優しく響いた。
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