乾杯

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健吾くんの電話番号を登録し、 そして、すぐにその番号を手帳にも記した。 もう二度と、あんな想いはしたくなかった。 健吾くんが車で二時間……。 メイクもした。 着替えも終わった。 部屋の掃除も終わったし、 後は何をしたらいい? 鏡を見つめ、 部屋中を見回し、 考えているとふと、目に入った自分の指先。 普段からネイルは爪を磨く程度しか手入れをしない。 周りのみんなの飾りの付いた綺麗ネイルを見ると羨ましく思うこともあるが、 基本的に面倒くさがりの性分(しょうぶん)なので私は手を出していない。 だけど…… 今日くらい。 私は普段は使わない小さな道具を引っ張り出して、 こたつで爪の手入れを始めた。 アーモンド形の爪はピンクがかったベージュに染め、 手の指が終わると足の爪にも施した。 足なんて…… そう思いながら。 身長に爪を乾かし、 完全に乾いたところでほうじ茶を入れ、 読みかけの推理小説を開いた。 読みかけと言ってもずいぶん間があいてしまったので、 内容が思いだせずに最初から読む羽目になった。 けれど、そうまでしても気持ちが落ち着かないせいか、 内容などほとんど頭に入ってこなかった。
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