夢か現実か、それとも過去か

18/25
前へ
/39ページ
次へ
夜中―――。 純也さんは私を抱いたまま穏やかな寝息を立てていた。 彼の腕を枕にしていた私はなかなか寝付けず、 彼を起こさないようにそっとベッドを抜け出した。 真冬の夜に布団から出ることは苦痛以外の何物でもないけれど、 この時ばかりはそうも感じなかった。 身震いしながらカーディガンを羽織って靴下を履いた。 サッシに近付いてカーテンをほんの少しだけ寄せてみる。 現れたサッシの曇りを指先で小さく(ぬぐ)って外を覗くと、 街灯に照らされていたのは予想通りの雪景色だった。 雪はもう十分に積もっていたけれど、 それでもなお、雪はやみそうになかった。 音もなく降り積もる雪を 私はぼんやりと眺めていた。 雪は…… 雪だけは、 私の願いを叶えてくれるのかもしれない。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1059人が本棚に入れています
本棚に追加