包装

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一月の最終週。 経理部では月末の支払い分を全て処理してしまえば忙しさが緩和される。 この日は全ての処理が終わって、 残業をしなくても済みそうだった。 それが叶って定時で帰宅を決めた私は後輩の美和ちゃんとロッカールームで帰り支度をしていた。 「あー、今月も頑張りましたね」 美和ちゃんは伸びをした後、バッグからスマホを取り出し、 (なめ)らかな手つきで画面を操作し始めた。 そのスピードは私なんかとは全然違う。 思わず見とれてしまうほどの指使いだった。 「美和ちゃん、すごい」 本音を漏らした私に美和ちゃんが笑う。 「これくらい普通ですよ。慣れですよ、慣れ」 「そう? 私なんて全然慣れないな……」 私は自分の不器用な指先を見ながら手を開いたり閉じたりして見せた。 「鈴先輩も彼氏ができたらすぐ慣れますよ~。一日何回もメールしちゃうし。そうだ! あれからどうですか!? なんか出会いありました?」
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