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階段を降りる足には力が入らず、
足を踏み外しそうだった。
涙が溢れそうになるのをこらえて、
壊れそうな心臓を守るために左手で胸元を強く抑えた。
それでも冷たい風が吹きつけると、
視界の下半分が涙で滲んだ。
過去と現実が頭の中で交差して、
駅で誰が待っているのかわからなくなりそうだった。
『待ってる』
そう言ってくれたのは誰だったろうか。
顔に当たる雪と涙で私の顔はきっとぐしゃぐしゃだろう。
でも、もう……そんなことはどうでもよかった。
駅までの道のりがずいぶん遠く感じた。
駅のロータリーに入ると、足が止まる。
大都市でもないこの街の駅前は薄暗く、
駅の待合室からもれる明かりがその前に立つ一つの影を浮かび上がらせる。
……ああ、そうだ。
私を待っていたのは……
……純也さんだったんだ。
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