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ゆっくりと近づく私にその影は反応した。
純也さんの顔がはっきりとわかる距離に届くと、涙が湧いた。
純也さんの震える瞳が
私を好きだと言っていた。
純也さんは何も言わずに笑みを浮かべた。
そして、私に歩み寄り、
私を自分の体の中に包み込んだ。
純也さんのカラダは
私が駆けて来た夜道の空気よりも冷たかった。
私を抱きしめる純也さんの腕をほどいて、私は彼の手を握った。
かじかんで冷えた指先が私の熱を求めていた。
私が彼の手を引いて駅前に残る一台のタクシーに近付くと、
ドアは静かに開き、私たちはタクシーに乗り込んだ。
タクシーに乗る間に一度離れた私の手を、純也さんは座席に座ると同時に引き寄せた。
私がアパートの住所を告げるとタクシーのウィンカーがカチカチと音をたて、タクシーはゆっくりと走り出した。
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