夢か現実か、それとも過去か

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しばらくして涙を拭いた私は純也さんから体を離して、キッチンに立った。 「……温かいもの入れますね。コーヒーか紅茶。……ほうじ茶もありますけど」 「じゃあ、ほうじ茶。()きっ腹だしね」 そう言われてやっと思い出した。 夕飯も食べていない。 「すみません。お腹空いてますよね。適当に作りますけど、いいですか?」 純也さんは微笑み、私が場を繋ぐためにつけたテレビも見ずにほうじ茶を飲みながら私の料理が出来上がるのを退屈そうにもせずに待ってくれた。 体を温めるために砂糖と醤油のきいた煮込みうどんにした。 冷凍の鶏肉を解凍して冷蔵庫の余り野菜を入れて煮込む。 鍋の立てるグツグツという音が静かな部屋ではうるさいくらいに際立って聞こえていた。
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