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「義兄妹だとして……。いくらなんでも、二人とも俺の意思を無視し過ぎ。」  ため息を吐く内田に片眉を吊り上げる。 「あら、ちゃんと『いいよ』って頷いてたわよ?何なら、ムービーも撮ってあるから見てみる?」 「は……はいッ?!」 「――高津さんがね、『証拠に撮っておく』って。ほら、ばっちりカメラ目線だよ。」  あさ美の携帯電話の画面の中で、確かに彼女に向かって「昼は高津さんのだけど、夜は真奈美のだよ」と自分が話している。 「……この映像って、高津さんが?」 「うん。このムービーも送ってもらったの。撮影した後の高津さんったらいつになく上機嫌でね。今朝の事、口裏合わせてくれるって。」  「良かったね」と無邪気に笑うあさ美を横に頭を抱える。 「智和……、ご不満?」 「いや、さすが義兄妹の契りを交わしただけあるって言うか……、二人とも俺に容赦がねぇーッ!!」 「あら、虐められるの好きなんだから、良いじゃない? 昨夜の智和、すごく可愛かったよ?」  そう耳元で囁いて鼻先をすり寄せるあさ美の色っぽさに思わず眉根を寄せる。 「ふふッ、耳、真っ赤。」  ペット扱いからは少し進んだような、それでいて後退したような関係。 (マジ、敵わない……。)  年齢差云々の問題だけでない。  でも、あさ美の一挙手一投足に振り回される事に悪い気もしない。 「そろそろ行かないと遅れちゃうよ?」  そう耳元で擦れた囁き声は、むしろ、引き止めるための見えない鎖みたいだ。 『智和は、綺麗すぎる。綺麗すぎて……汚したくなる。』  柔らかで、温かな肌。  不機嫌そうな高津の表情も浮かぶものの、欲望の方が勝る。  内田が半身を翻して抱きつくと、驚いたのか、あさ美が身を固くする。  目の前のあさ美には自分の存在だけでは贖えないような闇を抱えている。 『智和は綺麗なままでいて……。』  そう呟いた彼女こそが「真奈美」なのだろう。  顔を埋めて、あさ美の鼓動を近くに感じる。 「――智和?」 「……やっぱり、嫉妬しそう。」  高津より自分を見て欲しい。  誰より自分を頼って欲しい。 「――あのさ。」  「何?」と小さくあさ美が訊ねてくる。 「……昼間が高津さんって言うのはともかく、夜の俺は真奈美さんのものだから。」  ふふっと笑う気配を肌で感じる。
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