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 短い夏の夜が明けて、後朝の別れは淋しいような、それでいてくすぐったいような気になる。  ただ二日酔いの場合は除いて。  酷く頭がガンガンする中で、内田が目を覚ますと今日もあさ美の部屋に居た。 「高津さんが今日も午前中は直行扱いにしてくれるってよ?」  指先でくるくるとあさ美が胸元を弄る。 「ちょっ……、真奈美さ……ん。」 「――なぁに?」  くすくすと笑うあさ美に内田は顔を赤くする。  昨夜の内田も欲望にあらがえず「私の物になる?」という問い掛けに二つ返事で「なる」と答えていた。 「……やけ酒みたいに飲むから、そーなるんだからね?」  上体を起こすと、シングルベッドはギシリと軋む。 「――ごめん。」  バツが悪くて、ベッドサイドに脚をおろす。  その姿に眉尻も自然と下がった。 「智和がお酒に弱いのは知ってる。」  そして、携帯電話をかちかちと操作しながら、あさ美が隣に座る。 「待受、橋なんだね。」 「……って、それ、俺の携帯じゃん。他人(ヒト)の勝手に弄らないでよ。」 「他人(ヒト)のはしないよ。でも、これは智和のでしょ?」 「……は?」 「智和は誰のもの?」  悪戯めいて笑うあさ美に苦笑いが浮かぶ。 「――智和は私のもの。……って事は、智和の物は私の物。」 「んなッ?!」 「あら、男に二言はダメよ?」  お持ち帰り二回目になると、二日酔いの朝を堪能する余裕も出てくる。  内田は不服そうな面持ちになると、あさ美を引き寄せる。 「――ジャイアニズム、反対!」  内田が取り上げようと手を伸ばすと、ちょうど携帯が震える。  余計に躍起になったが、あさ美はナンバーディスプレイに表示された名前を見ると、その手を払って電話に出た。 「――はい、内田の携帯です。」 『おはよう、あさ美ちゃん。』 「おはよ、……って、智和、くすぐったい!」 「いいから返して。」  高津は苦笑した。 『朝から元気だな。』 「そうね。あっ……。」 『あさ美ちゃん?』  内田が手を高く上げて携帯を取り上げる。  あさ美は不貞腐れたような表情に変わった。 「もしもし。」 『――やっと出たか。』 「何ですか?」 『ちょっと、事務所まで来い。12時半な。』 「はい?」 『それだけだ。じゃあな。』 「ちょっと!!」  ツーツーと音が鳴る。
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