26

2/25
39人が本棚に入れています
本棚に追加
/25ページ
「散らかってますけど、どうぞ。」  久美子は二人を招き入れて、手料理の用意された居間に通す。  手料理の美味しそうな香りが出迎えてくれる。 「お、美味(ウマ)そう!」 「そりゃ、うちの奥さんの手料理ですから。」 「――おべっか使っても、お小遣いは増えないわよ?」  亮はわざとらしく肩を落とす。 「久美子が虐める……。」 「本当にお前ら、変わらないよな。特に亮は、うん、成長が見えない。」  久保が肩を竦める。  一方、亜希はすぐ脇にある写真立てを見ていた。 「その真ん中の子がね、うちの子なの。今年で小学生になるわ。」 「可愛い。」 「――穂乃香ちゃんは、ぐんぐん成長してるよな。」 「成長が著しくてな、洋服を買い替えるペースがかなり早いんだ。」 「今日は、いないの?」 「お祖母ちゃんちに出掛けてるわ。」 「……そうか。残念。」 「穂乃香も残念がってたのよ。タカの事が大好きだから。」 「ちなみに、嫁にはやらないからな。」 「あのねえ。」  婚約者を案内されるわけじゃないと分かって安堵したのと、久保の楽しげな様子に亜希はニコニコとしていた。 「亜希、遅くなったけど、こちらは大学時代からの友人の、松田 亮と、奥さんの久美子さん。」 「はじめまして。進藤 亜希と申します。」  松田は「やっぱりいいなあ!」と言いながら何回か頷く。  肩を竦めた久美子に席を案内されて、亜希は久保の隣の席に腰を下ろした。  振る舞われたのはポテトサラダとハンバーグ、それと焼きたてのパンとコーンスープ。  松田は亜希が解離性健忘になってることも笑い飛ばすほど明るくて大らかな性格で、亜希もすぐに打ち解けた。 「じゃあ、目が覚めたら高校二年から23歳になってたってこと?」 「そうなんです……。自宅に帰ってテレビが薄型になってたのには驚きました。」 「――小学生の穂乃香が中学生になるかあ。」 「へ?」 「いや、六年って短いようで長いよなって思ってさ。朝起きて穂乃香が中学生だったらビックリする。」 「――その頃には『パパ嫌い』って言われるんだな。」 「マジで!? ショックで倒れちゃう!」 「だったら、あんまり、その話は広げないことね。」  久美子に嗜められると、松田はしゅんとする。  しっかりと久美子が松田の手綱を握っているのがよくわかって、亜希はクスクスと笑った。  この夫婦も久保と一緒でとても温かい。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!