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炭酸が弾けて、金色の液体が体に染みていく。
亜希の声が聞けただけで、まだこんなに心が震える。
久保は顔を顰めて、ティーシャツが伸びるくらい胸元を握り締めて、体をくの字に折り曲げて胸の痛みに堪えた。
憤慨した様子の内田が戻ってくる。
「――高津さんにボロクソ言われてスッキリしましたかあ~……って、久保セン?」
久保の様子に自分の席に座って、内田は恐る恐る携帯電話を手にした。
「――ありがとな。」
亜希に少なくとも「幸せに」と言えただけでも進歩だ。
久保は泣きそうな表情で顔を上げた。
「……高津さんは何て?」
首を横に振る。
「――話してない。」
「え、でも通話記録が……。」
「亜希が出た。」
内田の表情が強張る。
「――俺も少し席を外すな。」
カタンと音を立てて久保が出ていく。
内田は焦った。
(――不味い。)
折り返し電話で内田の携帯電話が震える。
顔を強張らせたまま、高津からの電話に答える。
「――はい。内田です。」
『久保に替われ。』
「あ……の、今、丁度、席を外して……。」
『戻ってきたら連絡先教えて構わないから、もう一度、電話させろ。』
高津の声は怒鳴っているわけじゃないのに肝が冷えた。
「――あの。」
『お前の入れ知恵なんだってな、直接、電話しろって言ったのは……。』
「……進藤に繋がるとは、……思わなくて。」
『――大バカヤロウ。』
大声で怒鳴り付けたいのを押し殺している感じに、びくびくしながら謝る。
「――申し訳ありません。」
『……過ぎた事を言っても仕方ない。とにかく戻ってきたら、電話させろ。』
「はい……。」
悄気かえって、内田は高津に謝った。
ちょっと考えれば分かることなのに、配慮が足りなかったと内田は後悔した。
気まずい気分で飲む酒はちっとも酔えなくて、カンパリオレンジの残りを飲み干す。
メニューを開いて次を頼むために見ていたら、久保が中座していたのから戻ってくる。
「――久保セン。次もハイボールで良い?」
「ああ。」
視線を合わせるのは気まずくて、メニューを見ながら話す。
「……あの。高津さんが……電話寄越して欲しいって。」
ずずっと内田は自分の携帯電話を渡す。
久保は「わかった」と言うと躊躇いなくリダイヤルをする。
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