きみと歩んだ日々。

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   頬を撫でられていた。  何かに強く引き戻されて──それから?  目を開けると、そこは真っ白で何もない空間。  俺の目の前には、知らない女の人がいた。  俺より少しだけ、年上っぽい。  親しげに、いとおしむように俺の頬を撫でてくる。  めちゃめちゃ美人なんだけど、本当に見覚えがなくて。  困惑していると、その人は悪戯っぽく顔をくしゅっと崩して笑った。 『久しぶりね。元気だった?』 『……? ええ……』  どういう距離感で接したらいいか判らなくて、身じろぎする。  するとその人はおかしくてたまらないというように笑った。 『いやあね。他人行儀なんだから』 『……でも、だって』 『そういうところ、本当にあの人そっくり。食べちゃいたい』  その人は本気の視線を俺に注ぎながら、ぎゅっと鼻をつまんできた。 『……ちょっと、やめて』 『だって、久しぶりに会ったんだもの。もっといい子いい子ーってしたいのよ』 『……?』  すると、遠くから低い笑いが響いてきた。男の声だ。 『おい、そのへんにしないか。困ってるだろ』  女の人を嗜めながらも、その声は明らかに楽しんでいた。 『だって、あなたそっくりで、あなたより可愛らしくって。ついいじりたくなっちゃう』 『お前のものじゃないよ。早く帰してやれ』 『はーい』  クスクスと笑いながら、目の前の女の人は俺の肩をポンと押し返す。 『早く、お帰りなさい。あなたの還る場所はここじゃないでしょう』  やがて声ごと、白い空間が遠ざかっていく。  優しげに微笑みながら手を振る女の人の後ろに、デニムのポケットに手を突っ込んだ背の高い男がやってきて──俺を見て、口の端をニヤリと上げて笑った。  その人は、同性の俺から見ても腹が立つ程の色男だった。 .
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