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「……じゃあ、陽香は聞いてたの? 弘毅から?」
携帯用ボトルにコンソメスープを入れて持ってきた陽香が、マグカップに注いでくれながら頷いた。
昨日、俺が病院のご飯の味があまりしないとぼやいたかららしい。
病人じゃないからこれでもちゃんとした方らしいんだけど、それにしても薄すぎると思った。
陽香の気遣いをありがたく思いながらマグカップを受け取る。
「久遠寺菜々子ちゃんて子のこと。話してくれたよ。彼自身のことも……」
思わず陽香は言いよどんだ。
それはそうだろう。陽香はそんな話を喜んで口にするような女じゃない。
弘毅自身のこと──それを考えると、俺も心が疼く。
そんな傷の癒し方など、俺なんかが知るはずがないのだから。
陽香は少し沈んだ目をしながら、マグカップを持ったまま動かない俺を見て溜め息をついた。
「仁志くん、あたしね」
「……うん?」
ちゃんと熱いスープを口にしながら、俺は陽香の顔を見る。
「おいしい」
「よかった」
陽香はボトルの注ぎ口をパチンと締めてしまうと、椅子に腰を下ろした。
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