行きつ、戻りつ。

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   だからといってこのままにしておいていいとも思えなくて、本当に悩みどころだった。 「久遠寺菜々子ちゃんには、加賀美さんておじいさんがついてるんでしょう? なら、久遠寺さんの許可なんていらないんじゃないかな……」 「……」  飲んだそばからまた口に入れたくなるようなスープの味が見事で、俺はもう半分程飲んでしまっていた。 「ずいぶん、大胆なこと言うね」 「あたしが菜々子ちゃんだったら……って、考えてたの。ずっと」 「……」  ……それを言われると。  たぶん陽香は、7年前のことが頭に浮かんだんだろう。  俺がしたことで、俺が勝手に別れを決めて切り出して──陽香は置き去りにされたような気持ちになったんだろう。  それを今の久遠寺に重ねている。実に彼女らしい感傷だと思う。  状況が違うとはいえ、似たようなものだと俺も思うから。  俺はマグカップをゆらりと揺らすと、じっと考え込んだ。  ……そろそろ、頼んだことがどうにか転がってるはずなんだけどな……。 「陽香。警察に行くことって、まだあるの?」 「え? ううん、もう特にお聞きすることはないですって……何かあったら携帯か本屋の方に連絡があるとは思うけど」 「そっか」 「仁志くん?」 「うん……?」 「何、考えてるの」  それには返事をせず、俺はスープの残りを飲み干した。 .
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