手のひらからつたわるもの。

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   ハタハタ……と、膝の上に滴が落ちる。  その涙を見て、お母さんはふっと微笑んだ。 「……もし、そうならあなたには話しておいた方がいいと思ったのかも知れない。本人は知らなくても、あなたには」 「す、すみません……」 「私こそ、ごめんなさい。でも、今の方がいいような気がして……」  涙を拭いながら椅子に座り直すと、「坂田さん」とささやくような声がして、外から看護師さんがゆっくりとカーテンを開けた。  処置室はナースステーションと繋がっている上、他にも緊急で運ばれてきた患者さんが何人か眠っている。  そのため人の気配は絶えないが、妙に静かだ。  マスクをつけた看護師さんは声をひそめながら、そっと立ち上がったお母さんにさっきの手術の説明の同意書にサインを求めているようだった。  お母さんは済まなさそうな顔で振り返ると、「悪いけど、もう少しお願いしてもいいかしら」と言った。  もちろんですと答えると、お母さんは看護師さんと一緒にナースステーションの方に行ってしまった。  やがてまた耳を刺すような静寂が戻ってきて、薄暗い中仁志くんの額の汗を拭った。  すると仁志くんはまた顔を動かし、「陽香、水」とぼやく。  叶えられない懇願に胸が裂かれそうになって、その額に口付ける。 「もうちょっと……もうちょっとで朝だから、それまで、我慢して……」 「喉渇いたよ、陽香……」  困っていると、仁志くんは拘束されている手足をじれったそうに動かした。 .
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