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「仁志くん……!」
溜め息が出る程温かかった。
パンストなら遠慮しようと思ったんだけど、そうでないと判った瞬間、俺の理性がふつりと切れる。
よく考えたら、俺は陽香が喜ぶのを見ているのが好きなんであって。
別に自分はあってもなくてもどっちでもいい……と、思う。
陽香は慌てて俺の腕から逃れようとするけど、下手に動いて俺の傷に触れてしまったら大変だ──というのが頭にあるらしく、軽く身をよじるだけになっている。
「……じっとして」
屈もうとしていた陽香の後ろから低くささやくと、彼女は悔しそうに溜め息を漏らす。
……欲しいのは俺だけじゃない。それが判っているからこその暴挙だった。
「陽香」
「……ん」
既に潤んでどうしようもない瞳を俺に向けると、陽香は恨めしそうに口を開く。
「ばか……っ」
声に妙な甘さが混じらないように努力したつもりだったらしい。
けれど、その努力も虚しく陽香の声は既に艶やかだ。
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