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こういう手術の後は勝手に飲食をしないようにするためと、ベッドから落ちないようにするため手足を拘束するものだと説明は受けたものの、目にすると忍びない。
「……陽香」
「なあに……」
また目に滲んでくる涙をこらえるので精一杯だ。
「好きだよ……だから水」
思わず苦笑が漏れる。
何もかもがごっちゃになってしまっているらしい仁志くんを前に、少し冷静になろうと決めた。
「陽香」
「……ちゃんと眠ろう、仁志くん」
「愛してる」
だから水、とでも言うつもり……?
思わず硬直していると、仁志くんは諦めたように呟いた。
「水、もういいから……陽香が、欲しい……」
「──……」
その場に崩れ落ちてしまいそうになりながら、身体の底からの震えにじっと耐えた。
「仁志くん……聞こえる?」
「……うん……聞こえてるから、早く……」
「あげるから。そんなのいくらでもあげるから……早く治って」
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