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「──よっ」
病室を出るなり、そこにいた意外な人物を見て、あっと小さく声を上げる。
首に巻かれたストールを気にしながら、廊下に立っていたのは岳ちゃんだった。
岳ちゃんとは、昨日の夕方水族館で別れたきりだった。
あたしは仁志くんについて病院へ、岳ちゃんは多分警察署へ──。
岳ちゃんは困ったような笑顔を浮かべ、肩を竦める。
「……助かったってな。よかったじゃん」
すっきりとした岳ちゃんの声に、口唇を噛みしめてコクンと頷いた。
その反応を見て、岳ちゃんはすたすたとあたしのそばまで来る。
「時間、ある?」
「え……」
「少し、あんたと話がしたくて……でも、病室に入ってってイチャついてたら嫌だな、と思って……」
「そんなことできる状況じゃないでしょ」
ムッとして見せると、岳ちゃんはククク……と肩を揺らして笑う。
「判ってるって。……まだ、自力で立つこともできないんだろ。刑事さんから聞いた」
「……判った、いいよ。仁志くん、今眠ったところで……軽く何か食べようと思って、出てきたの」
俯いて低い声で答えると、岳ちゃんはほっと息をついた。
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