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病院の正面玄関と連なるようにして、いくつかの施設があった。
薬局はもちろんのこと、軽食レストランや簡易化されたコンビニ。
あたしと岳ちゃんは、その中の和食屋ののれんをくぐった。
店に入った瞬間漂う出汁のいい香りにつられて、きつねうどんを注文する。
岳ちゃんはもう少しボリュームあるもの食え……と薦めてくれたけど、それ以上のものを口にする程の食欲はなかった。
岳ちゃんは無理やり注文したコーラで口を湿らせながら、ふと口を開いた。
「正直、あそこでハルのこと諦める気はなかったんだ、俺」
カラン……と、岳ちゃんの手のグラスの中の氷が弾ける。
顔を上げると、真剣な岳ちゃんの瞳が真っすぐにあたしを見ている。
その射るような視線に、息を呑んだ。
すると、あたしを緊張させるだけさせておいて、岳ちゃんはクク……と喉の奥でくぐもった笑いを漏らす。
「“なかった”……だからな」
岳ちゃんの、意地悪く吊り上げられた口唇の端。
それで一瞬だけ騙されたことに気付いた。ぷいとそっぽを向いてやると、今度はクスクスと肩を揺らして笑う。
「怒んなって。その顔、可愛くてけっこう好きだけど」
「な……っ」
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