手のひらからつたわるもの。

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   すると、岳ちゃんはばつの悪そうな笑顔を見せ──そして、俯いた。  彼の指先が弄ぶストローが止まり、遅れて氷がカラカラン……とぶつかり合って止まる。 「無理だったよ、俺には」 「え?」 「あんた、あの男を助けようと思って飛び込んだんだろ? 俺も一瞬ハルの後を追おうとしたんだけど……できなかった。情けない話だけど」 「──……」  そのままあたしのことを見ようとしない岳ちゃんを見ながら、静かにかぶりを振った。 「岳ちゃん」 「……ん」 「岳ちゃん、こっちを見て」  のろり……と、岳ちゃんは億劫そうに顔を上げる。  それでもまだ目と目が合わないことに焦れて、あたしは彼の顔を覗き込んだ。 「情けなくなんてないよ」 「ハッ、慰めてくれなくていいって……余計情けないから」 「そんなことないよ……勝ちとか負けとか、そんなことで量っちゃだめ。その……岳ちゃんがあたしを想ってくれた気持ちが、本当に恋だった……っていうのなら」 「……ハル?」  ようやく、岳ちゃんの瞳があたしを見た。  ふっと小さく笑い、テーブルに視線を落とす。 「正直に、言うね」  手元のグラスに少しずつ水滴がついていくのを見ながら、ぽつりぽつりと話し始めた。 .
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