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「いたた……」
最初の一、二度手順を教えてもらってから、朝と晩の傷周りの消毒は自分でやることにしていた。
看護師さんに身体を触られるのが落ち着かない、というのもあるけど、自分で自分の状態をちゃんと理解していたかった。
昨夜、我慢しきれずに陽香に悪戯してしまったせいで、皮膚が突っ張って少し赤く腫れてヒリヒリしている。
看護師さんに見られていたら「変に寝返りでも打った?」と訊かれてしまうところだった。
傷にガーゼが張り付き過ぎないように、表面に薬を塗ってテープで押さえる。
簡単に剥がれないことを確認し、ようやくTシャツを着た。
すると、ガラッと遠慮なく引き戸が開けられる。
「よ」
そこには、いつものジャージに身を包んだ浅海さんがいた。
タン、と静かに引き戸を閉めると、浅海さんは怪我をしているのが嘘のようにひょこひょこっとベッドのそばまでやってきて、自分の部屋の如く椅子に腰を下ろした。
「今日、ハルたんは?」
「ああ、昼すぎまで仕事してくるって……」
「そか」
それだけ言うと、浅海さんは俺の顔を見てニヤッと笑う。
「すっかり嫁、って感じじゃないの。焼けぼっくいに火が点くどころの騒ぎじゃないじゃん」
「……さあ、どうなんでしょうね」
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