行きつ、戻りつ。

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   俺がベッドから手を伸ばすと、浅海さんは慌てて小切手をポケットにしまい込む。  冗談だって言うのに、彼は青ざめていた。 「返すんだって。勘弁しろよ……!」 「先輩とはいえ、口に気をつけてくださいね。ホント、思ったこと何でもそのまま言うんだから……」  溜め息交じりに言うと、浅海さんはいてて……と姿勢を正した。  今ので変な動きをしてしまったようだ。 「……退院したら、アポ取って会ってくる」 「大丈夫ですか? 一色の母親に話を通してもらったらどうです?」 「……それ、考えたけど。ただの教師ならそれでいいけど、俺、そうじゃないし」  あくまで一色の相手でいたい、ということか。  浅海さんが我知らずどれだけ彼女にベタ惚れなのかがよく判る。  それを指摘すると変に不機嫌になりそうなので、それは言わないでおくことにした。 .
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