230人が本棚に入れています
本棚に追加
俺がベッドから手を伸ばすと、浅海さんは慌てて小切手をポケットにしまい込む。
冗談だって言うのに、彼は青ざめていた。
「返すんだって。勘弁しろよ……!」
「先輩とはいえ、口に気をつけてくださいね。ホント、思ったこと何でもそのまま言うんだから……」
溜め息交じりに言うと、浅海さんはいてて……と姿勢を正した。
今ので変な動きをしてしまったようだ。
「……退院したら、アポ取って会ってくる」
「大丈夫ですか? 一色の母親に話を通してもらったらどうです?」
「……それ、考えたけど。ただの教師ならそれでいいけど、俺、そうじゃないし」
あくまで一色の相手でいたい、ということか。
浅海さんが我知らずどれだけ彼女にベタ惚れなのかがよく判る。
それを指摘すると変に不機嫌になりそうなので、それは言わないでおくことにした。
.
最初のコメントを投稿しよう!