そのくちびるから伝わるもの。

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  「陽香」 「違うもん」 「なんで」 「あたしじゃないよ。太陽って言うなら、仁志くんの方なんだから……言ったでしょ、あたしの世界に色をつけてくれたんだ、って」 「……駄目だよ、ここは俺、譲らないから」 「ど、して?」  ぐすっと鼻をすすりながら言うもんだから、陽香の口調が子どもみたいになってしまう。  それをまた愛しいと感じながら、俺は躊躇うことなくそれを口にした。 「陽香の名前の中に、おひさまの一字が入ってる。だから、駄目」 「……!」  更に涙をあふれさせた陽香のうなじを抱えるようにして──俺は、月食に夢中になる人達をよそに、躊躇うことなくその口唇に口付けた。 .
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