そのくちびるから伝わるもの。

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  ゚・*:.。..。.:*・゚・*:.。..。.:*・゚ 「お伺いするのが遅くなってしまって、ごめんなさい……」 「いや……」  この娘と話すのに、ベッドにいるという状況が落ち着かなくて、俺は彼女を5階のテラスに誘った。  陽香には怒られるんだけど、俺は相変わらず煙草を持ち込んでいる。  据え置かれた灰皿に、とんとん……と灰を落としながら、俺は隣に腰を下ろす久遠寺を見た。 「……今日はひとり?」  久遠寺は、コクンと無言で頷いた。  海棠に転校してきた時の彼女は、いつも不敵な微笑みを携えていた。大人のはずのこっちが気圧されてしまう程。  が、今の久遠寺はどうだ。  髪はちゃんと巻いているし、お嬢さんらしい薄いメイクも施されていて、その美少女っぷりは変わらない。  けれど、水を失って萎れてしまった花のようだ……と思ってしまう。  その原因に心当たりがないわけではなかったけど、俺はあえて黙っていた。  真冬そのものの灰色がかった空を眺めながら、俺はふうっと煙を吐き出す。 「……弘ちゃんが、何も話してくれなくて……」 「……よく、面会に行けたね」 「加賀美さん、父や母をごまかしてくれて……それで、やっと……」  ……どうやらあの加賀美さんは、久遠寺の家でよほどの信頼を得ているらしい。 .
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