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弘毅と久遠寺を会わせていたことはもう久遠寺亨の知るところで──なら、弘毅が逮捕された今、もう二度と関わらせないようにするはずだ。
それには、加賀美さんを久遠寺から引き離すのが一番早い。
けれどそれをしなかったということは、久遠寺の面倒を見るには加賀美さんでなければならないという理由でもあるのかも知れない。
久遠寺の家の中のことまで詳しく窺い知ることはできないけれど、おそらくそういうことだと思う。
「1日に1組、15分しか話せないのに……最初は、断られたの。本人が会いたくないって言ってる、って門前払いにされるところだったの。だけど、そこをどうにか説得して欲しいって、加賀美さんが話してくれて……」
「……会ってはくれたの」
「ええ。でも、私の顔を見もしないで、何を言ってもだんまり。時間です、って言われたらその時だけ私の目を見て、もう来ないでくれ、って……」
「そう……」
ゆっくりと、肺を煙で満たしながら俺は風に揺れる久遠寺のやわらかそうな髪を見つめる。
……この娘が、俺の従妹か……。
やっぱりまだ、ちっとも実感が湧かないけれど。
血の繋がりというものに何か特別な力があるのなら、俺が浅海さんのことでつい一色に甘くしてしまったことや、久遠寺を見捨てられずに心配してしまった気持ちの理由は、それなんだろうか。
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