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「……坂田、お前」
「何ですか?」
「……ホント、悪知恵働くな、お前……尊敬したわ、今」
「冷静に考えたら、判ることでしょうに……」
俺の言葉に、浅海さんはかっと頬を染めた。
平常心を失っていた、その自覚はあったらしい。
信号待ちをしている間に、浅海さんに手紙を返す。
すると彼は運転席の前の方にそれをポンと投げてしまうと、大きく溜め息をついた。
「……とりあえず、放課後ひとりにはなるな、って釘さしとく……」
「朱音ちゃんにも頼んでおくといいですよ」
「そうする。話したらちょっと落ち着いたわ。サンキュ」
いいえ、と笑いながらふと考えた。
踏むだけでいいから……としつこく手紙を出す後藤先生と。
俺の協力を得て、学校で度々ことに及んでしまっている浅海さんと。
社会的に考えて、どっちがどうという問題ではない気がする。
が、何となく怖いのでそれは言わずにおくことにした。
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