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「……くん。仁志くん。仁志くん……」
そっと肩を揺すられて、ハッと目を覚ました。
ぱちぱち、と何度も瞬きをして見上げると、そこには心配そうに覗き込んでくる陽香がいた。
「……あれ」
「もう。駄目じゃない、そんな寝方しちゃ……」
気付くと俺は、ベッドにもたれたその格好のまま、ずるずると横になってしまっていたらしい。
「ん、あー……」
目をこすりながら、陽香をもう一度ぼーっと見上げる。
……美人だな。
昔からぼんやりと思っていたことを急にはっきりと自覚して、そのままへらっと笑ってしまった。
「……? なに?」
陽香はコートを脱ぎながら、眉根を寄せた。
まだ自分の思考回路がぼんやりとしてちゃんと働いていないということは判っているけど、寝ぼけているわけじゃない。
「いや。可愛いなあと思って」
「……ばか。何、言ってるの」
陽香は一瞬困ったような怒ったような、どちらとも言えない顔をして、脱いだコートをハンガーにかけて俺のジャケットの隣に吊った。
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