もう、きみをひとりにはしない。

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   俺の傷に重みをかけてしまう……と、ぐったりしながらも陽香は器用に隣に転がった。 「仁志くん、大丈夫?」  1日仕事をして、その上で俺に色々されて、もうへろへろなのは陽香の方のはずだった。  その疲れ切った顔を見て、思わず笑いが漏れる。 「大丈夫だって……ていうか、陽香、上になってくれたし」  さらっと言ってやると、陽香の顔がぽっと赤くなった。  ……本当に、いつまでも恥じらう彼女が可愛くて仕方ない。  正直俺だってもう体力はゼロだけど、陽香の頭の下に腕を差し入れ、そっと抱き寄せる。  こういう、後のことまでちゃんとできない男は最低だ……というポリシーが俺の中にはある。  乱れた陽香の髪を整え、余韻に浸りつつその額にちゅっとキスをした。  すると、恥ずかしそうにしながらも陽香はふふっと笑う。 「仁志くん」 「うん?」 「幸せ」 「……うん、俺も」  突然の陽香の申告に、胸がぎゅっと締め付けられる。  いつからかなんてもう判らないけど、俺は陽香の口からずっとその言葉が聴きたかったのかも知れない。  ──やっぱり、1日も早く一緒になりたい。  入院中、陽香にもほのめかしてはいたけれど、ずっと考えていたことだ。  陽香の身体をぎゅっと抱いて、俺はぽつりと言った。 .
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